Perplexity、記憶システム「Brain」のアーキテクチャと本番環境での成果を公開
Perplexityが、2026年6月18日に初めてプレビュー公開したComputerエージェント向けの自己改善型記憶システム「Brain」について、詳細な技術解説を公開した。今回は内部アーキテクチャを詳しく説明するとともに、本番環境における30日間の成果データを共有している。
詳細
- ファイルシステムベースの記憶: Brainは記憶を
memory/ディレクトリ内のファイルとして構造化する。3つの層で構成され、knowledge/(エンティティや学習内容を統合したリンク付きMarkdownページ群、これがBrain本体)、notes/(トピック別の短いメモ)、sessions/(生の会話履歴、要約、インデックス)からなる - Wiki形式のリンク: ページ同士は「wikilink」(
[[page]])で関連エンティティを結び、「citation link」([cite:N])で主張の根拠となる元のセッションまで遡れるようにしている。これによりエージェントは知識の出所を検証できる - ファイルシステムのように閲覧: エージェントはデータベースへのクエリではなく、
cat、grep、リンクのたどり、Gitリビジョンの比較といった通常の操作でBrainを探索する - ハイブリッド方式のマテリアライズ: 記憶ツリー全体をコピーする(コストが高い)、あるいはリモートファイルシステム経由で読む(Perplexity曰く400〜500倍遅い)のではなく、サンドボックス起動時に関連ファイルを事前ロードし、専用の「Memory Agent」サブエージェントがセマンティック検索で必要に応じて追加ファイルを取り込む
- オフラインの「Dream」エージェント: バックグラウンドプロセスが4段階のループでBrainを継続的に精査する――現在の状態を把握し、新しいセッションを要約し、注目すべき観察内容を適切なwikiページに紐付け、リンクと引用を更新する。提案された変更は決定的なフォーマットチェックとセマンティックな根拠検証を経てからGit経由でコミットされる
- オフライン評価結果: 640件の合成ペルソナを対象にした評価では、回答の正答率が6.1ポイント向上(60.0%→66.1%)、根拠のリコール率が5.2ポイント向上(57.3%→62.5%)。特に好み(preference)に関する質問(+10.2pt)、時系列推論(+8.6pt)、行動詳細に関する質問(+6.9pt)で大きな伸びが見られた
- 本番環境30日間の成果: 正答率+9.3ポイント、情報の鮮度(currentness)+8.0ポイント、根拠のリコール率+8.9ポイントに加え、トークン使用量は約15%削減、コストは10%削減、生成速度は10%向上した
その後
今回の続報により、Brainは単なるリサーチプレビューの発表から、実際の本番環境での数値を伴う体系化されたシステムへと段階が進んだ。プレーンなMarkdownファイル、Gitによる変更管理、Wiki形式のリンクという構成は、ブラックボックスなベクトルストアではなく、あえて低技術で検証可能なアプローチを取ったエージェント記憶の設計思想を示している。PerplexityはBrainが有効なユーザーについて、セッションを重ねるごとに記憶が改善され続けるとしている。